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リョナラー連合主催バトルロワイアル(パロロワ) 041.女の子を動けなくして虐めるお話

闇の精霊シェイドのヤミナデはマシロから離れた後、町へとやってきた。
参加者の集まりやすい町で殺すべき獲物を探すためだ。

(……さて、参加者はいるかしらね?)

ヤミナデは姿を隠しながら、警戒して町の中を進む。

(……警戒しているのは、他の参加者も同じはず。
 そう簡単に見つかるとは思えないけど……)
「……さあ、アルフィさんっ!ディアナさんっ!
 この町にはもう誰もいないと分かったんですっ!
 早く次の場所に移動して、師匠たちを探しましょうっ!」

いきなり傍の民家から聞こえてきた大声に、ヤミナデはずっこける。

(な……なんで、殺し合いの中であんな大声出してるのよ……?
 マシロでもあそこまで露骨に馬鹿じゃないわよ……?)

ヤミナデは声の聞こえてきた民家に呆れた目を向ける。
ちなみにこの頃、当のマシロは大声で『ヤミナデ、飯よこせ』と叫びながら
走り回っていたので、先ほどの声の主と同様に露骨な馬鹿であった。

ヤミナデは大声のせいで力の抜けた身体に活を入れて、考え始める。

(と、とにかく……さっきの大声の内容から考えると、
 この民家には最低でも三人の参加者がいるみたいね……。
 さすがに三人相手は辛いし、どうしたものかしら……)

ヤミナデは目を細めて、民家を睨み付けるように注視する。
どうすれば、中にいる三人(推定)を仕留めることができるか。

(……ダークネスで視界を奪って不意打ちすれば、
 一人くらいは……いえ、駄目ね……。
 その後、他の二人に攻撃されるだけだわ……。
 いつもアイシスとマシロが一緒にいたから、
 一人で戦うとなると、やりにくいわね……)

ヤミナデは考える。
中にいる三人を殺す方法を。殺し方を。
考えて、考えて、ひたすらに考え続けて……。


「お困りの様ね、精霊さん」
「……っ!?」

……その結果、周囲への警戒が疎かになっていた。

慌てて振り向いたヤミナデの喉元に剣が突きつけられる。

「っ!……くっ……!」

ヤミナデは喉元に突き付けられた剣に顔を青ざめさせ、
周囲の警戒を怠ったことを後悔する。

いきなり大勢の参加者を発見したことで、
そちらにのみ注意が向いてしまったのだ。

(……この様じゃ、マシロを笑えないわ……!)

冷や汗を流しながらも、ヤミナデは自分に剣を突きつけた相手を
睨み付ける。

相手は、褐色の肌の銀髪の少女だ。
二本の長剣と胸当てを装備しており、その立ち振る舞いは
歴戦の戦士のものだった。

(……まずいわね……隙なんて見せそうもない相手だわ……)

ヤミナデはごくりと唾を飲み込む。
もしかしたら、自分はここで終わるかもしれない。

「……そう固くならないでよ。
 私は貴女に協力しようと思って、声をかけたのよ?」

褐色の少女は笑みを浮かべて、ヤミナデに言う。

「……協力……?」

それに対して、ヤミナデは顔をしかめて返す。

「……協力しようとする相手に剣を突きつけるのが
 貴女のやり方なの?随分と変わってるのね」
「あら、これは失礼」

ヤミナデの皮肉に、褐色の少女はあっさり剣を引いた。

「まぁ、このくらいは勘弁してくれないかしら。
 私も声をかけただけで襲われたくないからね」
「…………」

褐色の少女の言葉に、しかしヤミナデは警戒を解かない。
この少女の腕前なら、たとえ剣を引いた状態でも
次の瞬間にはヤミナデを切り殺せるはずだ。

油断はできないと、ヤミナデは身体を緊張させる。

「……だから、そう固くならないでってば。
 協力したいって言うのは本当よ?
 貴女、あの民家の中の参加者を殺したいんでしょ?」
「……なぜ、そう思うの?」
「あれだけ殺気の籠った目で民家を睨みつけていれば、
 誰でも分かると思うけど」
「…………」

なんだか自分がとてつもない間抜けになったような気がして、
ヤミナデは悲しくなってきた。

(……いつもなら、こんなミスなんてしないはずなのに……)

やはり、不本意ながらも殺し合いに乗ったことと親友との決別が
ヤミナデの調子に影響しているのかもしれない。

ともあれ、過ぎたことは仕方が無い。

ヤミナデは気を取り直して、褐色の少女との話を再開する。

「……つまり、あの民家の参加者を仕留めるために
 私に協力するというわけね?」
「そういうことよ。
 さすがの私も三人を同時に相手にするのはきついからね」

褐色の少女はそう言って、肩を竦める。
ヤミナデは褐色の少女の提案について考える。

(……悪くはないわね……。
 上手くいけば、一度に三人の参加者を仕留められる……。
 もし失敗しても私にはダークネスの魔法があるし、
 この女をオトリにすれば逃げるのは難しくない……)

どうせ、この褐色の少女も殺し合いに乗った外道なのだ。
もしヤミナデが逃げて殺されたとしても、知ったことではない。

(……まぁ、外道は私も同じなんだけど、ね……)

そう考えて、ヤミナデは溜息を吐く。

「……いいわ、協力しましょう」
「そうこなくっちゃね」

ヤミナデの返答に、褐色の少女はニヤリと笑う。

「じゃあ、一応自己紹介くらいはしときましょうか。
 私はココット、サイギル族の剣士よ」
「……闇の精霊シェイドのヤミナデよ。
 短い間だけどよろしく頼むわ、ココット」
「こちらこそ、ヤミナデ」

二人の少女がお互いに名乗り合い、仮初めの同盟が成立した。

「……それで?どうやってあの民家を襲うの?」
「そうね……まぁ、シンプルでいいんじゃない?
 貴女、シェイドならダークネスくらい使えるでしょ?
 それを中にぶち込んで、私が奇襲をかける。
 注意が私に向いたところで、今度はヤミナデが不意打ち。
 上手くいけば、それだけで相手は半壊よ」
「……分かった、それでいきましょう」

ココットの作戦に、ヤミナデは頷く。
そして、二人のマーダーの少女は民家に
奇襲をかける準備に入ったのだった。




少し時間を遡って、ここは民家の中。

「……ということは、この町には
 今は参加者はいないということですか?」

冒険者の剣士アルフィが魔術師ギルドの学者ディアナに問う。

「ああ、おそらくな。
 先ほど、私が町の中を探索した時には
 誰にも出会わなかった」

ディアナはアルフィたちが来る前に、
町の中を探索し終わっていた。

その結果、得たものは武器代わりのフライパンのみ。
出会った参加者はアルフィとファルだけだった。

「……ということは、ここにいても時間の無駄ですねっ!
 さあ、アルフィさんっ!ディアナさんっ!
 この町にはもう誰もいないと分かったんですっ!
 早く次の場所に移動して、師匠たちを探しましょうっ!」

横で話を聞いていたファルは、ディアナの言葉を聞くと
勢いよく立ち上がって、大声で二人に出発を促す。

「ちょっ……!?
 だから声が大きいって、ファルっ!?
 さっきも注意したでしょっ!?」
「あっ……!?す、すみません……」

アルフィに叱られて、ファルは声を小さくして謝る。

格闘家であるファルは気合を入れるために、
常に声を張り上げる癖がついてしまっている。
これは師匠であるイリカに出会う前からの癖であり、
イリカの近くで大声を出すたびに「うるせえ」と
イリカに殴られていたのだ。

「……というわけなんですよっ!
 酷いでしょ、師匠ったらっ!?
 拳より先に口で言ってほしいもんですよねっ!?」
「……なんで、ナチュラルに愚痴り始めてるの?
 ていうか、何度も怒られてるなら直そうよ?」

なぜか師匠に対する不満を愚痴り始めたファルに、
アルフィは呆れた顔を向ける。

「むぅ……だって、今みたいな状況ならともかく、
 普段なら問題ないじゃないですか?
 私は格闘家なんだから、いついかなる時でも
 常に気合充分でいなきゃ」
「まぁ、その姿勢は頼もしいんだがな……」

不満そうなファルの様子に、ディアナは苦笑する。
アルフィも肩を竦めつつも移動の用意を開始する。

声の大きさはともかく、この町から移動するという
ファルの意見には賛成だからだ。
町で他の参加者を待つという考え方もあるだろうが、
アルフィやディアナとしては、この殺し合いの会場である島を
積極的に動き回って、島の情報も集めておきたいのだ。

(……それに、この殺し合いには三日という時間制限や
 禁止エリアの存在もある。のんびり構えている時間は無いし、
 有用な施設が禁止エリアで潰されたら、目も当てられない。
 時間を無駄にしないように、考えて動かないとな……)

ディアナはそう考えながら、ふと今の時間が気になって
袋から時計を取り出して、時間を確認しようとする。

(さて、今の時間は……)


暗闇。


「っ!?」

いきなり視界が真っ暗になり、ディアナは混乱する。

(な……何だっ!?一体、何がっ……!)

と、そこで何者かが近づく気配をディアナは感じ取る。
鞘走りの音ともに、ディアナに強烈な悪寒が近づき……

「そいやさあぁぁっっ!!」
「ごっふうぅぅぅっっ!!?」

しかし、何かを殴りつける音と共に、その気配は
吹っ飛ばされたように遠退いていった。

やがて暗闇が晴れると、ディアナの目に映るのは
杖を構えたアルフィと何かを殴り飛ばした姿勢のファル、
そして民家の入り口で倒れている褐色肌の銀髪の少女だった。

「ふん、性懲りもなく目くらましからの不意打ちですかっ!?
 この私に二度同じ技は効きませんよっ!」

ファルはそう言って、ドヤ顔で鼻息を荒くしていた。

「な……何が起こったんだ……?」

混乱したディアナは、傍に寄ってきたアルフィに聞く。

「……奇襲ですね。
 視界を奪って不意打ちしてきた相手を
 ファルが攻撃して止めたみたいです」

アルフィはディアナの質問に答えつつも、
倒れた褐色の少女を油断なく睨みつける。

「……ファルに心眼のサングラスを渡しておいて
 正解でしたね、ディアナさん」

そう言って、アルフィは小さく笑みを浮かべる。

アルフィの言う通り、ディアナはこの奇襲が起こる前に、
ファルに心眼のサングラスを譲っていたのだ。

非戦闘員のディアナや武器が不充分なアルフィよりも
ファルが身に着けていたほうが良いだろうとの判断からだ。

「う……ぐ……!」

脇腹を押さえながら、よろよろと褐色の少女が起き上がる。

褐色の少女……ココットは恨めし気にファルを見ると、
そのまま踵を返して逃げ始めた。

「むっ!?逃がしませんよっ!」

ファルはすぐさまココットを追いかけようとするが、
それを見たアルフィは慌てて止める。

「待って、ファルっ!深追いしちゃ駄目だよっ!」
「大丈夫ですっ!今はまともな武器も持ってますし、
 このサングラスのおかげで目くらましも効かないですからっ!
 アルフィさんはディアナさんを守っていてくださいっ!」

そう言って、ファルはアルフィの制止を振り切って
ココットを追いかけて行ってしまった。

「ファルっ!……ああ、行っちゃった……」

ファルの姿が見えなくなってしまい、アルフィは肩を落とす。
ディアナは難しい顔でアルフィに話しかける。

「……アルフィ、私たちも追いかけた方が良いのではないか?
 あの褐色の少女の外見とファルの反応から察するに、
 あの少女が君たちの言っていたサイギル族の剣士なのだろう?
 なら、ファル一人では万が一ということもあるかもしれない」
「……そうですね。今からでも追いかけましょう。
 ついてきてください、ディアナさん」
「分かった。すぐに荷物をまとめよう」

二人は荷物をまとめるとすぐに民家を出て、ファルを追いかける。


……しかし、数歩も進まないうちに視界が再び暗闇に包まれた。


「「なっ!?」」

アルフィとディアナは思わず驚きの声を上げる。
そして……。

「……ぐ、あっ……!?」
「!?……ディアナさんっ!?」

ディアナの呻き声が聞こえてきて、アルフィは狼狽する。
数秒後、アルフィの視界を覆っていた暗闇が晴れ始める。

「っ!?」

アルフィの目の前には、倒れて血を流すディアナの姿。

「ディアナさんっ!!」

アルフィは急いでディアナに駆け寄ろうとする。
しかし、横合いから飛んできた黒い球に気が付き、
慌てて持っていた杖で受け止める。

「ぐっ……、くぅっっ!!」

勢いを殺しきれず、アルフィは黒い球に吹き飛ばされる。
転がりながら体制を立て直したアルフィの視線の先には
長い黒髪と灰色の肌を持つ、黒服を纏った小さな少女の姿。

(……シェイドっ!!)

間違いない、闇の精霊のシェイドだ。
暗闇で視界を奪い、ディアナを傷つけたのは
このシェイドの仕業なのだ。

「……貴女、殺し合いに乗っているのっ!?」

怒りを含んだアルフィの問いかけに、
シェイド……ヤミナデは目を細める。

「……馬鹿なことを聞くのね。
 もし私が乗っていないように見えるなら、
 貴女の頭は随分とおめでたいわよ」

そう言って、ヤミナデは黒い球……闇の力を持つ魔物の得意技、
『闇の言霊』をアルフィ目掛けて放つ。

「くっ……!」

アルフィはそれを横っ飛びに回避して、ヤミナデに突っ込んでいく。
ディアナの傷が心配だが、それを確認するにはまずヤミナデを
倒さなければならない。

(……手早く終わらせてやるっ!!)

アルフィはヤミナデに接近し、杖を鋭く突き出す。
ヤミナデはそれを宙に飛んで回避し、お返しとばかりに
闇の言霊を放とうとアルフィに手を突き出す。

「遅いっ!!」

だが、アルフィはヤミナデの手を杖で思いっきり叩き潰した。

「ぐっ……!?」

たまらず、ヤミナデは手を押さえる。
畳みかけるようにアルフィはヤミナデに連続で突きを繰り出す。

「くっ、このっ……!」

ヤミナデはアルフィの猛攻を必死で回避しながら
ダークネスを放ち、アルフィの視界を闇で閉ざした。

しかし、それは失敗だった。

「はあああぁぁぁぁっっ!!」
「!?……しまっ……!」

至近距離でわざわざ視界を奪うために一手消費したために、
ヤミナデは回避の機会を失ってしまったのだ。

アルフィからすれば、この距離で視界を奪われようが
敵の気配は依然としてそこに感じられる。
ならば、暗闇の中にあるその気配を叩けば良いだけだ。

アルフィの攻撃に数瞬遅れて反応するヤミナデだったが、
避けきれずに攻撃を受けてしまう。
鈍い音を立てて、ヤミナデの鳩尾に深々と杖が突き刺さる。

「が、はっ……!?」

強力な杖の突きを喰らったヤミナデは吹き飛ばされて
地面をごろごろと転がっていった。

「ぐ、くっ……!はっ……はぁっ……!」

鳩尾を強打したヤミナデは呼吸困難に陥いり、口をパクパクさせて
息を吸おうと喘ぐが、それが叶わずにもがき苦しむ。

しかし、アルフィが吹き飛ばされたヤミナデに近づいてくる前に
ある程度は回復できたため、ヤミナデはアルフィの次の行動に対して、
僅かであるが対処の時間を得ることができた。

(ま……まずいっ……!この女、予想以上に強いっ……!
 私一人じゃ、勝てないっ……!)

仮にも上位の精霊であるはずのヤミナデが
杖一本でここまで追い詰められるとは。

逃げたココットを敵の一人が追いかけていったことと、
二人のうち一人は非戦闘員らしいことから作戦通りに
奇襲をかけたが、どうやら目論見が甘かったらしい。

ココットの失敗をフォローするどころか、
これではヤミナデのほうがやられてしまう。

(……これ以上、付き合ってやる義理はないわ……!
 一人は潰したし、後は勝手にやりなさい……!)

ヤミナデは胸中でそう吐き捨てると、
再びアルフィ目掛けてダークネスを放った。

今度は攻撃のためではなく、逃げるために。

「!……待ちなさいっ!」

アルフィもこれが逃げるための煙幕であると気が付き、
暗闇の中でヤミナデを追いかけようとする。

しかし、すぐにディアナのことを思い出して諦める。

(今はディアナさんの手当をしないと……!)

アルフィは闇が晴れると、すぐにディアナに駆け寄った。

「ディアナさん、大丈夫ですかっ!?
 しっかりしてくださいっ!」
「う……うぅ……」

ディアナは血を流してぐったりしている。
血の気が引き、身体を痙攣させているその様子を見て
アルフィはすぐに危険な状態だと理解した。

一刻の猶予も無いと判断したアルフィは急いで
ふところからキュアポーションを取り出す。
これはディアナがあらかじめ、アルフィとファルに
一本ずつ渡しておいたものだった。

アルフィはキュアポーションの小瓶を開けると、
そのままディアナの口に乱暴に流し込んだ。

「がっ!?げほっ、ごほっ!」

咳き込むディアナだが、アルフィはそんなディアナの頭を押さえ付け、
口を手で塞ぎ、キュアポーションを無理やり飲み込ませた。

キュアポーションがディアナの喉を通り、胃に流れ落ちる。
するとディアナの傷がみるみる塞がっていき、顔に血色が戻っていった。

(良かった……!)

その様子にアルフィはほっとする。
危ういところだったが、どうにかディアナの命を救うことができたらしい。

(……でも、さすがに今からじゃファルを追いかけるのは無理だよね……)

シェイドの相手に時間を取られたため、ファルがどこまで
敵を追いかけていったのか、もはや見当も付かなくなっていた。

(……無茶はしないでよ、ファル……!)

アルフィは頼りになるがいろいろと抜けている
年下の格闘家の無事を祈るしかなかった。


【A-3/町/1日目 1:30~】

【ディアナ@学者】
[年齢]:18
[状態]:気絶、ダメージ(小)
[武器]:フライパン
[防具]:なし
[所持品]
・ディアナの袋
 ・基本支給品一式
 ・キュアポーション×1
[思考・状況]
1.フィナを探す
2.アルフィと一緒に行動する
3.ルルフェ、イリカは安全と認識
4.褐色の女剣士(ココット)を警戒
5.褐色の女剣士(ココット)を追ったファルが心配


【アルフィ@剣士】
[年齢]:17
[状態]:健康
[武器]:ナヤマの杖
[防具]:皮の鎧
[所持品]
・なし
[思考・状況]
1.ファル、ディアナと一緒に行動する
2.ルルフェを探して合流する
3.ナターシャを探して保護する
4.褐色の女剣士(ココット)を警戒
5.イリカ、フィナは安全と認識
6.褐色の女剣士(ココット)を追ったファルが心配


【ヤミナデ@闇の精霊シェイド】
[年齢]:不明
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、右手の骨にヒビ
[武器]:なし
[防具]:なし
[所持品]
・ヤミナデの袋
 ・基本支給品一式
 ・(不明の武器・防具・道具)
[思考・状況]
1.アイシス以外の参加者を全て殺す
2.マシロは最後に殺す
3.赤髪の少女(アルフィ)は強いので正面からは戦わない






一方、逃げたココットとそれを追いかけていったファル。

「まてえぇぇっっ!!この卑怯者めえぇぇっっ!!」
「くっ……!しつっこいわね、アイツっ……!」

町を出たココットはファルを撒くために森に入ったのだが、
ファルがずっとココットに張り付いて追いかけてくるために
未だに二人の追いかけっこが続いていた。

ファルのあまりのしつこさに、ココットはうんざりしていた。

(ちっ……!こうなったら、やってやるわっ!
 どうやら他の二人は追いかけてこないみたいだし、
 相手が一人くらいならっ……!)

ココットは足を止めて身体を反転させ、
竜鱗の長剣を両手に構える。

それを見たファルも足を止め、構える。

「ふふん、ついに観念しましたねっ!
 このままボッコボコのメッタメタにやっつけて、
 たっぷりと反省してもらいますよっ!」
「……あら、殺すつもりはないってことかしら?
 舐められたものね」

ファルの言葉を聞いたココットは甘い考えだと冷たく笑うが、
当のファルはそんなココットにもっと冷たい目を向ける。

「はぁ?何言ってるんですか?
 殺人者なんて生かしておくわけないでしょう。
 反省はあの世に逝ってからしてください」
「っ……い……意外と言ってくれるわね……!」

外見からは想像できないファルのドライな返答に
ココットは不覚にも一瞬言葉を失ってしまった。

それを隙と見て、ファルはココットに突進する。

「はああぁぁぁぁっっ!!」

ココットへと雄叫びを上げて突っ込むファル。
しかし、ココットはそんなファルを馬鹿にしたように笑う。

(ふん、考えも無しに突進なんて馬鹿のやることね)

ココットはファルを迎え撃つために、剣を低く構える。
だが、ファルはココットの間合いに到達する前に拳を振りかぶった。

当然、ココットよりも間合いの狭い無手のファルでは
ココットまで攻撃が届かない距離だ。

(!?……何を……?)
「……雷拳・散っっ!!」

気合と共に振り抜いたファルの拳から稲妻が迸り、
勢い良くココットに襲いかかった。

「なっ!?」

ファルの予想外の攻撃に、ココットは呆気に取られる。

(コ……コイツ、雷を拳に纏うだけでなく、
 飛ばすこともできるっていうのっ!?)

動揺しつつも、ココットは素早く稲妻を避ける。
しかし、それに重ねるようにファルがココットの前に躍り出て、
雷の拳を振り下ろしてきた。

「チェストオオオォォォォッッ!!」
「っ!……舐めるなあああぁぁぁぁっっ!!」

ココットは腕を大きく振りかぶって、ファルに両の剣を叩き付ける。

『『ビシャアアァァァァンンンンッッッ!!!
  ガオオオオォォォォンンンンッッッ!!!』』
「ぬぐぅぅぁぁっっ!!?」
「がっはぁっっ!!?」

ファルの拳とココットの剣が凄まじい轟音を立てて打ち合い、
二人の身体は衝撃で弾け飛び、近くの木に叩き付けられた。

ファルはすぐに飛び起き、ファイティングポーズを取る。

「ちぃっ!やりますねっ!
 まさか、あのタイミングで迎撃されるとはっ!」

悔しそうにしつつも、ファルのその顔は笑っていた。

一方、ココットも起き上がって剣を構える。
しかし、その顔はファルと違い、戦慄で固まっている。

(あ……ありえないっ……!?
 私の『ガミュラ』が相殺されるなんてっ……!?)

ココットが先ほどファルに放ったのは『竜剣ガミュラ』。
サイギル族の竜剣技の中でも最も習得することが難しい、
秘奥義ともいわれている究極の竜剣技だ。

それが、こんな自分よりも年少であろう少女に破られた。

(……認めないっっ!!)

ココットはきっと眉を吊り上げ、ファルを睨み付ける。

集落の中でも、男を押し退けて一番の剣の腕を持つココットは
その実力に対するプライドも人一倍強かった。

(……さっきのは、体勢が悪いままに技を放ったからよっ……!
 次は、あんな無様は晒さないっ……!)

ココットは二刀を深く構え、ファルを見据える。

「むっ……!」

ファルもココットが再び先ほどの技を仕掛けてくると見て、
素早く迎撃の構えを取る。

(……サイギルの秘奥の竜の剣っっ!!
 思い知るが良いっっ!!)

ココットの二刀がファルへと迫る。
それはまさに、巨竜が牙を剥いて獲物へと襲い掛かるかのような
圧倒的なプレッシャーをファルへと与えた。

「くっ……はあああぁぁぁぁっっ!!」

プレッシャーによる身体の震えを無理やり押さえ付け、
ファルはその攻撃に合わせるように雷拳を放つ。
しかし、万全の状態から放たれたココットの竜剣ガミュラの
威力は先ほどの比ではなかった。

「なっ!?がっっ……、あ、がああぁぁぁぁぁっっ!!?」

ココットの攻撃はファルの雷拳をあっさり打ち破り、
ファルの身体に巨大なバツ印の傷を刻み付けた。

(……やったっっ!!)

ココットはその結果に会心の笑みを浮かべる。
しかし、その笑みは倒れかけたファルがダンッ!!と力強く
足を大地に叩き付け、身体を起こしたのを見て失われる。

「……な、……」

そして次の瞬間、ココットはファルの拳に殴り飛ばされていた。

「が、はっ……!?」

木の幹に激しく叩き付けられて咳き込みながら、
急いでダメージを確認する。

殴られたのは脇腹で、アバラが何本かイカれていた。
相手の拳が雷を纏っていたためか、全身が痺れてまともに動かない。

「……はぁ……はぁ……!やって、くれましたね……!」

相手のほうに目を向けると、ファルはぎらついた目でココットを睨み、
身体の傷から夥しい血を流しながらも、ココットによろよろと近づいてくる。

(……ぐ、ぅ……馬鹿、な……!?
 確実に、致命傷を……与えたはず……!)

ココットは混乱するが、ファルが腕に着けている腕輪を見て合点がいく。

(……そうかっ……!黄金竜の腕輪っ……!)

あの腕輪の回復効果によって、本来なら致命傷だったはずの
ファルの傷がギリギリ踏み止まれる程度まで抑えられたのだ。

その結果、ココットは手痛い反撃を受けてしまい、膝を突いている。

(……失策だわ……!
 頭に血が上って、考えなしに大技を放ったせいでっ……!)

ココットは自身の行動を悔やみつつも、何とか身体を動かして
袋から治癒の霊薬を取り出そうと試みる。

しかし、雷拳によって痺れた身体では上手くいかず、
そうしているうちに、ファルがすぐ目の前まで来てしまった。

(……まずいっ……!?くっ……動けっっ!!
 動け、動け動け、動けええぇぇぇぇっっっ!!!)

ココットはすぐ傍まで来たファルの姿に焦り、
死にもの狂いで身体を動かそうとする。

だが、その試みは失敗に終わる。

「……終わりです……!」

ファルが腕を大きく上げ、ココットにその腕を振り下ろそうとする。

……しかし。

いきなりファルは反転し、その拳を背後に叩き付ける。
ファルの背後には、いつの間にか近づいてきていた前髪の長い優男の姿があった。

「おっとっ!?危ない、危ない……!」

優男はおどけるようにそう言って、ニヤニヤ笑う。

(……あいつは……!?)

ココットはその優男の姿に見覚えがあった。

その優男は、ツクモ。
ジョーカーの一人で、先ほどココットを襲った男だった。

おそらく、この男はココットとファルの戦いを偶然見つけて、
漁夫の利を狙うために乱入してきたのだろう。

「おのれ、不意打ちとは卑怯なっ!!何者ですかっ!!?」

大声で問うファルに、ツクモはニヤついたまま答える。

「僕かい?僕はツクモ……ジョーカーさ」
「っ!!」

ファルはツクモのその言葉を聞いた瞬間、ツクモに殴りかかった。
しかし、満身創痍のファルの攻撃はあっさりツクモに避けられてしまう。

「おっとっとっ!
 さっきといい、いきなり酷いじゃないか?
 僕はまだ君に何もしていないだろう?」
「黙りなさいっ!!
 私たちをこんな殺し合いに巻き込んだ外道めっ!!
 貴方はこの場で仕留めますっ!!」

ファルは怒りに身を任せて、ツクモに向かっていく。

……しかし。

「無駄だよ」

ツクモがそう呟いた瞬間、ファルが動きを止めた。
近くでそれを見ていたココットは、驚愕した。

(なっ……!?こ、これは……!?)

それは明らかにファルの意思によるものではなかった。
ファルは前のめりでツクモに向かっていこうとする
姿勢のままで、停止したのだ。

文字通り、ファルは完全な停止状態に陥ったのだ。
ファルの身体は微動だにせず、その表情は怒りに燃えたままで
僅かにも変化せずに固まっていた。

その間に、ツクモはファルの傍まで走り寄って、
手に持った短剣でファルの背を深々と突き刺すが、
ファルはそれでもまったく動かず、何も反応しない。

しかし、ツクモが短剣をファルの背から引き抜いて指を鳴らすと、
途端にファルはツクモが先ほどいた場所に向かって動き始めた。

「……がっ……!?」

しかし、動き始めてすぐに背中に受けた傷のせいで、
ファルは数歩進んだ先で倒れてしまった。

「……な……?あ、え……?な、んで……?」

倒れたまま混乱するファルの様子を見ながら、ココットは確信する。
これが、以前にこの男と戦ったときの不可解な現象の正体であると。

あのとき、ココットも今のファルと同じように停止させられていたのだ。
そのせいで、ココットはいきなり攻撃を受けたように感じられたり、
ツクモが瞬間移動したように見えたのだ。

(……じ、冗談じゃないわっ……!?
 こんな能力、どう対処しろっていうのよっ……!?)

ツクモの強力無比な能力に、ココットは恐怖する。

こんな反則じみた能力、勝てるわけがない。
ツクモは相手がどれだけ強くても関係ないのだ。
相手を停止させて心臓を一突き、それだけでツクモの勝ちなのだから。

(……逃げないと……!)

ココットは強くそう思った。
このジョーカーの男に近づいては駄目だ。

以前の戦いではココットが勝利を収めることができたが、
それは相手の油断があってこそのものだったのだろう。

幸い、ツクモがファルの相手をしていた時間のおかげで
ココットの身体の痺れはいくらか回復していた。

ココットは冷や汗を流しながら、注意深くツクモの隙を探る。

「くっ……!妙な術を使いますねっ!
 でも、私は負けませんよっ!!」
「お?いいね、いいねぇっ!
 やっぱり、女の子はそれくらい元気なほうが
 虐め甲斐があって楽しめるよっ!」

ツクモはどうやら、ココットが既に戦闘不能だと勘違いしているらしく
(実際、さっきまではその通りだったが)まだ辛うじて動けるファルの
相手を続けていた。

ファルは重傷の割にはよく戦っていたが、ツクモには一撃も与えられず、
逆に少しずつ身体の傷を増やしていき、その動きも精彩を欠き始めていた。

どうやら、黄金竜の腕輪による回復効果よりも
ツクモによるダメージのほうが大きいらしい。

(よしっ……!いけるっ……!)

ツクモは完全にファルの相手に集中している。
これなら、逃げられる。

「……わけ、ないだろう?」
「っっ!?」

背後から聞こえてきた声に、ココットの背筋が凍る。
いつの間にか、ツクモがココットの後ろに移動しており、
ツクモと戦っていたはずのファルは胸から血を流して倒れていた。
傷の位置と深さから考えて、間違いなく心臓を貫いているだろう。

ココットの行動など、ツクモはお見通しだった。
ツクモはファルを倒す直前にココットが逃げ出さないように
ココットを停止させ、ファルを倒した後に傍まで移動したのだ。

「本当はもうちょっとあの緑髪の女の子を嬲りたかったんだけどねぇ。
 ま、二人もいるんだし、逃がさないためには仕方ないよね。
 その代わり、あの子の分まで君には泣き叫んでもらうとしようか」

ツクモが禍々しい笑いを浮かべて、背後からココットの背に短剣を突き付ける。

(くっ……!こうなったら、やってやるわ……!)

ココットは覚悟を決めて、両手の二刀を握り締める。

勝てる見込みなど、欠片もない。
しかし何の抵抗もせずに終わるなど、
ココットのプライドが許さなかった。

しかし、覚悟を決めたココットに対して、
ツクモは狼狽したような声を上げる。

「……おいおいおいおいっ!?
 冗談だろっ!?よりにもよってっ……!」
「……っ!?」

狼狽えるツクモの様子に、ココットは困惑する。
しかし、これはチャンスだ。

(……隙だらけよ、ジョーカーさんっ!!)

ココットは振り返り様にツクモに二刀を振るった。
振り返ったココットの瞳にぎょっとするツクモの姿が一瞬映ったが、
その姿は次の瞬間には掻き消える。

しかし、既にカラクリは分かっている。
ココットはツクモの気配を背後に感じ、素早く振り向く。

「……なっ!?」

だが、ココットはそこで驚愕の声を上げる。

なぜなら、そこには起き上がり復活したファルの姿があり、
顔に焦燥を浮かべたツクモがファルに攻撃を仕掛けていたからだ。

ファルは意識がはっきりしないのかぼんやりしていたようだが、
ツクモの姿を目にした瞬間、目を見開いて意識を覚醒し、
ツクモの攻撃を拳に嵌めた鉄甲で弾き飛ばした。

「……くそっ……!」

ツクモは苛立たし気に舌打ちして、ファルとココットから距離を取る。
ファルもココットとツクモを警戒し、二人を視界に置けるように移動する。
言わずもがな、ココットも二人に倣って距離を取り、慎重に剣を構える。

そのまま三すくみの状態が確立され、しばらく睨み合いが続いた。
そして、その状態でしばらくの時間が経った後、ファルが口を開いた。

「えーっと……敵の貴方たちに聞くのもどうかと思いますが、
 何が起こったか教えてくれませんかっ!?」
「……はっ、教えるわけないだろう?
 ちょっとは考えてものを喋ったらどうだい?」

ファルの問いに、なぜ自分から能力の説明をしなければならないのかと
ツクモは馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
……が、そんなツクモの代わりにココットのほうが口を開く。

「……この男は相手の動きを完全に停止する力を持っているわ。
 その力の影響を受けた相手はその間は意識もなくなるみたいね。
 貴方がいきなり攻撃を受けていたのはそのせいよ」
「おお、なるほどっ!アレはそういうことだったんですかっ!」
「ちょっ……!?おいこら、何勝手に……!?」

ココットの説明に、納得したようにファルは笑顔を浮かべ、
ツクモは能力をばらされて焦燥の顔を浮かべる。
それを無視して、ココットはファルに問う。

「……今度はこっちの質問よ。
 緑髪の貴方は、どうやってあの傷から回復したの?
 その腕輪じゃあれだけの素早い回復は不可能なはずだけど?」
「分かりませんっ!気が付いたら治ってましたっ!
 ていうか私、むしろそれが不思議で貴方たちに
 何が起こったか聞いたんですけどっ!」
「…………」

ココットは疑わしそうにファルを見ていたが、
嘘は言っていないようだと判断する。

訝るココットに、意外にもツクモが答えを教えてくれた。

「……ミラクルベルだよ。
 たぶん、緑髪の君の支給品だったんだろ?
 そもそも、短剣で心臓を貫いてやったのに生き返るなんて
 ミラクルベルの力以外にあり得ないだろう?」
「ああっ!そういえば持ってましたよ、そんな名前の鈴をっ!
 ……えっ!?あの鈴、そこまですごいものだったんですかっ!?」
「……なるほど、そういうこと……」

ツクモの言葉にファルは驚愕し、ココットは納得する。
ミラクルベルは持ち主が致命傷を受けた場合にのみ、
傷を完全に回復してくれる強力な回復アイテムだ。

おそらく、ツクモはファルがミラクルベルの力で
回復していくのを見たために、焦り出したのだろう。

ツクモは忌々しそうに、ファルを……
正確にはファルの鉄甲と腕輪を睨む。

「まったく……拳聖の鉄甲に、黄金竜の腕輪に、ミラクルベルだって?
 どれだけ恵まれた支給品なんだよ?
 ゲイルのヤツ、もう少しバランス取れってんだ……!」
「むっ……!この鉄甲は貰い物ですよっ!
 私の武器は、ただの石だったんですからねっ!」

そこだけは譲れないと、ファルが反論する。

「ああ、なるほど……。
 それなら、まだ分からないでもないか……」

ファルの言葉に、ツクモは一応は納得の表情を見せる。
その様子を見ながら、ココットはファルに提案する。

「……ねえ、緑髪の貴方。
 このままじゃ埒が明かないと思わない?
 さっきのいざこざは忘れて、一時共闘して
 この男を倒しましょうよ」
「なっ!?」

ココットの言葉にツクモは驚愕し、彼女を睨む。
それを無視して、ココットは続ける。

「……さっき説明した通り、この男の能力は危険よ。
 相手を停止させて、心臓でも突き刺せば終わりなんだからね。
 ……だからこそ、ここでこの男を倒すことは貴方と私、
 双方のメリットになるはずよ」
「それは……たしかにそうですけど……」

ココットの提案に、ファルは悩むように眉を寄せる。
それに対して、挑発するようにツクモが笑う。

「……ふん、いいさ。やってみなよ?
 ただし、君たち二人が襲い掛かった瞬間、
 二人とも停止させて、そのまま殺してやるからね」
「む……ぐ……!」

ツクモの言葉に、ファルは悔しそうに歯噛みする。

確かに、たとえファルとココットが共闘したとしても
二人同時に動きを止められては意味がない。
そのまま、二人ともツクモに殺されて終わるだけなのだから。

しかし、それに対してココットは冷たく笑う。

「……私が何のために、その子に協力を求めたと思っているの?
 ジョーカーさん、貴方の能力って二人同時に停止させるには
 力の消耗が激しすぎるんじゃないかしら?
 それか、そもそも二人同時に停止させるのは不可能とか……」
「っ!?……な……なぜ、それをっ……!?」

ココットの言葉に、ツクモは今度こそ本気で狼狽し焦り始める。
しかし、ココットは白けた顔で返答する。

「……随分と分かりやすいリアクションね……。
 正直、半分は引っ掛けだったんだけど……まぁいいわ。
 ……私がそう思った理由は、貴方の能力の使い方よ」

そう言って、ココットは話し出す。
主に、ファルに対しての説得のために。

「……私も最初はジョーカーさんの能力は無敵に思えたわ。
 でも、それにしては能力の使い方がみみっちいのよね。
 そのことから、少なくとも消耗の激しい力だってことは
 簡単に推測できるわ」
「……くっ……!」
「おそらく、全快の状態で一人を停止し続けたとしても、
 1分……いえ、30秒も停止できないんじゃないの?」
「……ぐ、ぅっっ……!?ぐぅうぅっっ……!!」

ツクモが怒りと狼狽に拳を握り締め、歯が軋むほどに噛み締める。
ファルはココットの説明を聞き、ツクモの様子を観察したことで
先ほどの説明が真実だと確信する。

「……というわけよ、緑の。
 そんなわけで、共闘してもらえると助かるのだけど?」
「『緑の』って何ですかっ!?私の名前はファルですっ!
 ……でも、たしかにこの男は共闘して潰しておいたほうが
 良さそうですね……分かりましたっ!協力しましょうっ!」
「決まりね」
「このっ……!クソアマどもがっ……!」

着々と共闘の路線へと話が進んでいく二人の様子に、
ツクモは怒りのあまり、二人を口汚く罵る。

しかし、やがて覚悟を決めたのか、
ツクモは表情を消し体勢を低くして短剣を構える。

「いいさ……やってやるよ……!
 てめぇら二人とも、楽に死ねると思うなよ……!」
「それはこっちのセリフですっ!
 貴方みたいな外道がまともな死に方ができるとは
 思わないことですねっ!」

そう言って、ファルはツクモに突っ込んでいく。
しかしファルがツクモに拳を振り被った瞬間、
ファルの動きが止まる。

ツクモがファルを停止させたのだ。

ツクモは動きの止まったファルを仕留めようとするが、
それよりも早くココットがツクモに剣を振るう。

ツクモは舌打ちして短剣でそれを受け止め、
器用にココットと自分の位置を入れ替える。
その瞬間、ファルの停止が解けて、拳が振るわれる。

「……って、あわっ!?あわわぁぁっ!?」
「ちょっ……!?」

ファル視点ではいきなりツクモの位置にココットが出現したため、
ファルは振るった拳の軌道を無理やり変えようとして体勢を崩し、
ココットを押し倒してしまった。

「くっ……!何やってんのよ、この間抜けっ!?」
「し……仕方ないじゃないですかっ!?
 こっちは停止させられてる間は何も分からないんですよっ!?」
「……仲間割れとは余裕だなぁ、オイ?」
「「っっ!?」」

その声に、慌ててファルとココットは問答を止めて
その場から飛び退こうとする。

しかし、今度はココットが停止し、その身体をツクモの刃が襲う。
それを見たファルは咄嗟に自分の袋をツクモに投げつけて、
ココットへの攻撃を阻止する。

「ちっ!」

ツクモは苛立たしげに袋を叩き落とす。
その数瞬でココットの停止が解け、彼女はすぐに安全圏へ離脱する。

ファルはすぐにココットの傍まで近づいてくる。

「ど……どうするんですかっ!?
 何だか、意外と苦戦してるんですけどっ!?」
「……そんなもの、当たり前でしょう。
 二人同時に戦えば勝機があるというだけで、
 あの男の『停止の力』が反則じみた脅威であることに
 変わりはないわ」
「ぬ……ぬぐぐ……!」

ファルは悔しそうにツクモを見ながら唸り声を上げる。
それを横目に、ココットはファルに囁く。

「……とにかく、二人同時に攻撃を続けるわよ。
 そうすれば、あの男は必ずどちらかの動きを止める。
 動けるほうが停止したほうを守り続けて戦えば、
 あの男はすぐに能力を消耗して使えなくなるはず……」
「……分かりましたっ!とにかく同時に攻撃、
 相方が止まったら守る、ですねっ!」

話し合いを終えると、ファルとココットは
再びツクモへと向かっていく。

ツクモはそうして向かってくる二人を冷たい目で睨み付け……。


……懐から魔石を取り出し、放り投げた。


「なっ……!?」
「うえぇっ!?」

二人は予想していなかった行動に面食らって、
咄嗟にそれぞれ反対方向に回避しようとする。

……しかし、そこでファルの動きが止まる。

「……しまっ……!?」

ココットは自らの失策に気が付くが、もう遅い。

砕けた魔石は極太の熱線を生み出し、凄まじい勢いでファルに向かっていく。
しかし、回避行動を取ったココットには当然ファルを庇うことなどできない。

熱線はそのままファルにまともに直撃し、ファルの身体を焼き焦がした。

「あ、が、ああああぁぁぁぁぁぁっっ!!?」

熱線が当たる直前に停止が解けたのだろう、
身体を焼き焦がされたファルが絶叫する。

ぶすぶすと黒い煙を身体から立ち昇らせながら、
ファルはがくっと膝を突いて、そのまま倒れてしまった。

「くっ……!」

それを見たココットは、咄嗟に懐から塗装の魔石を取り出す。

ファルが倒れては、もう勝ち目などない。
数秒でもツクモの視界を魔石で奪って、その間に逃げるしかない。

だが……。

「……がっ!?」

気が付くと、ココットは全身を切り刻まれて地面に倒れていた。
さらに両手に握っていた竜鱗の剣はなく、腰に差した短剣も無くなっていた。
ココットは全ての武器を失っていたのだ。

「……何逃げようとしてんだ、オイ?
 今さら逃がすわけがねぇだろうが?」
「ぐっ……!?くっ……うぅ……!」

ツクモがココットの背を踏みつけながら、吐き捨てるように言う。
そして、ココットを停止している間に奪い取ったのだろう竜鱗の剣を
ココットの右ふとももに深々と突き刺し、地面に縫い付けた。

「ぐ、あっあぁぁぁぁぁっっ!!?」

脚を貫かれる激痛に絶叫するココット。
ツクモはそれを意に介さず、もう一本の竜鱗の剣を
今度はココットの左ふとももに同じように勢い良く突き刺した。

「がああぁぁ、ああぁぁぁぁっっ!!?
 あ、……あ、ぐっ……!うああぁぁあぁぁぁっっ……!!」

両足を地面に縫い付けられたココットは、痛みに悶絶する。

ツクモはココットの両足を剣で貫いた後、
ゆっくりと倒れたファルのほうに歩いていく。

そして、ファルから拳聖の鉄甲と黄金竜の腕輪、心眼のサングラスを奪うと、
これもまたココットの腰から奪い返していたのだろうナヤマの短剣と
元々持っていたもう一本のナヤマの短剣をファルの両ふとももに突き刺し、
ココットと同じように地面に縫い付けた。

「……ぎぃあぅっ!?うっ……あ、あうぅっ……!?」
「……よう起きたか、クソガキ?
 今からお前らの拷問を始めるぞ」

拷問。

その言葉に、ココットはぞっとする。

(……こいつ……!
 ただ、私たちを殺すだけのつもりじゃない……!
 嬲り殺しにするつもりなんだ……!)

冗談じゃない、そんなことは真っ平御免だ。
しかし、ココットもファルも両足を潰された以上は
逃げるどころか、立って歩くことすら難しいだろう。

このままでは、本当に嬲り殺しにされてしまう。

(……いや……!)

まだだ。
ココットの懐には、治癒の霊薬が一つ残っている。
それを使って足の傷を回復すれば、まだ可能性はある。

(でも……どうやって……!?)

足に刺さった剣を引き抜いて治癒の霊薬を使う隙なんて、
この期に及んであの男が与えてくれるはずがない。

(……いえ、諦めては駄目だわ……!
 考えるのよ……!生き残るために……!
 私はこんな場所で死ぬつもりなんて、無い……!)

ココットが必死で考えを巡らせているうちに、
ツクモはうつ伏せに倒れたファルの左ふとももから
短剣を引き抜き、今度はファルの左腕に突き刺した。

「あああぁぁぁぁっっ!!?」

再び痛みに絶叫するファル。
しかしツクモは動きを止めず、今度はファルの右ふとももから
短剣を引き抜き、ファルの右腕に突き刺す。

「ひっ、ぎっ……!?う、ぐぅっ……!
 ううぅぅぅっっ……!」

今度はファルは叫び声を上げず、必死に声を噛み殺し、
呻き声を上げるだけで我慢した。

それに対して、ツクモはわざとらしく口笛を吹いて
感心したように笑う。

「……へ~え?もう身体を貫かれるのには
 慣れちゃいましたってか?」
「ぐ、ぅっ……!ふ、ふふふっ……!
 こ……このくらい、どうってことないですねっ……!
 師匠のしごきに比べたら、全然軽いですっ……!」

身体をぶるぶる震わせて目の端に涙を滲ませながらも、
ファルは引き攣った凄絶な笑いを浮かべてツクモを睨んでいる。

どう見ても、ただのやせ我慢である。
ツクモはそんなファルの様子をむしろ楽しげに見下ろしている。

「ほ~う?そうかい、そうかい……。
 んじゃ、次はこっちのほうイってみるかい?」

ツクモはファルの顔を見てニヤつきながらそう言うと、
ファルの背中に伸し掛かってファルの右手を押さえ付け、
その小指を握り締めた。

何をされるか理解したのか、ファルの顔が青ざめる。

「ちょ……あの……ま、まさか……?」
「とりあえず一本ずつ、ゆっくりとイこうか?」

そう言って、ツクモはファルの小指をゆっくりと間接とは
反対方向に曲げ始めた。

関節の限界部分で骨の軋む音と共に、ファルが痛みと恐怖で悲鳴を上げる。

「ひっ……!?や……やめっ……!?」
「ほいっと」

ツクモの軽い声とともに、ぺきっと乾いた音が
ファルの小指から響いた。

「ぎっ……!?ああぁぁあぁぁぁぁっっ!!?」

小指をへし折られたファルが泣き叫ぶ。

指は神経が集中している箇所であり、痛みに敏感な部位である。
そのため、拷問では指を潰したり、爪と肉の間に針を刺したり、
爪を剥がしたりなど、指に関する責めを行うことが多いのだ。

「う……あ、あぁぁぁ……!あぁぁぁぁ……!」
「……んん~……!よしよし、ちょっと気が晴れてきた……。
 ……んじゃ、続いて薬指もイっとこうか?」
「!?……やっ……!」

ファルはツクモの手から逃れようとするが、大の男に背中に伸し掛かられ、
両腕を短剣で地面に縫い付けられた状態で逃げられるわけがなかった。

そのまま右手の薬指を捕まえられて、小指と同じように関節と反対に
曲げられ始める。

指を一本ずつゆっくりとへし折っていくという責めが堪えたのか、
さすがのファルも一気に弱気になって、涙声でまくし立て始めた。

「あ、あ、ああああ、あのっ!?あのあのあのっ!?
 い、い、今からでも、か、かか考え直しませんかっ!?
 今ならまだ罪を悔い改めて改心しちゃったりなんかすれば、
 品行方正、清廉潔白な善人になれるかもしれませんよっ!?
 そうすれば、綺麗な恋人とかできたり、幸せな結婚とかできたり、
 可愛い子供とかお孫さんとかもできて、人生の大往生がですねっ……!?」
「ほい」

ぺきっ。

「ああぁぁあぁぁぁぁぁっっっ!!?」

再びファルの痛ましい絶叫が森に響き渡る。

「あ……はっ……!は、ぁっ……あ、ぁぁぁ……!」
「ん~?恋人ぉ?結婚ん?子供にぃ、孫ぉ?
 僕はそんなものより、君みたいな女の子の泣き叫ぶ声が聞きたいねぇ?」
「ひっ……!?い……いやいやいやっ!!?
 そそそそそれはきっと、恋人とかいたことないからでしょっ!!?
 それがどれだけ大事で、ありがたくって、幸せになれるのか、
 ちゃんと知らないからですよっ!!?
 だから、こんな風にいたいけな女の子を虐めて喜ぶような、
 変態で、サディストで、異常者で、欠片も救いようのない、
 この世のクズみたいな人間になっちゃうんですよっ!!?」
「おら、残りの指一気に全部イっとけやあぁっっ!!」

ぺきぼきばきぃっっ!!

「あっぎゃあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁっっっ!!!?」

殺し合いの会場全てに響き渡りそうな、悲痛なファルの絶叫。
ツクモはそんなファルの頭を土に塗れた靴で乱暴に踏みつけながら、
怒りの表情で怒鳴る。

「おら、次は爪だぁっ!!それが終わったら、
 今度は左手のほうも可愛がってやるからなぁっ!!?」
「ひ、ひいぃああぁぁあああぁぁぁぁっっ!!?
 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃぃっっ!!?」

泣き叫びながら謝りまくるファルの右手の爪が一枚一枚、
ツクモの手によって、べりべり剥がされていく。

既に聞き飽きるほどに聞いたファルの悲鳴が響く中、
ココットは冷めた心持ちで考える。

(……今なら、いけそうね……)

ファルが無意味にツクモを挑発してくれたおかげで、
ツクモはファルの拷問に夢中になっている。

今のツクモなら、ココットがこっそり何かしても
気が付かないかもしれない。

「う、……くぅっ……!」

ココットは両脚の剣をツクモに感付かれないように慎重に引き抜くと、
懐から治癒の霊薬を取り出して、自分の足に振りかける。

ココットの両脚の傷はみるみるうちに治癒されていき、
すぐに立って走ることが可能なほどに回復する。

それを確認したココットは安堵の息を吐くが、
その直後にツクモの怒声が響く。

「……てめぇ、何してやがるっ!?」
(!?……気が付かれたっ!?)

ココットは舌打ちし、急いで治癒された両足で立ち上がり、
竜鱗の長剣を一本だけ手に持って逃げ出そうとする。

……が、次の瞬間、
ココットのすぐ背後に気配が生まれた。

「っ!!」

今までに何度か停止の力を経験していたココットは
その状況に素早く対応して、横っ飛びに回避する。
その直後、ココットが先ほどいた位置を短剣が薙ぎ払った。

「ちっ……!てめぇ、まだ治癒の霊薬を持ってやがったのかっ……!」

忌々しそうに吐き捨てるツクモに、ココットは黙って
ツクモに向かって剣を構える。

「……何のつもりだ?もう逃げるのはやめたのか?」

ツクモがココットに苛立たしそうに聞いてくる。
それに、ココットは口元を吊り上げて答える。

「……ええ、もう逃げるつもりはないわ。
 貴方の能力はさっきので打ち止めみたいだからね」
「……っ!」

それを聞いたツクモは一瞬目を見開いた後、すぐに舌打ちをする。

ココットの指摘は、図星だった。

先ほどツクモはココットを停止させた状態で
そのまま殺してしまうつもりだった。
しかし、そうする前に能力の限界が来て、
ココットの停止が解けてしまったのだ。

あの状況から考えて、ココットに攻撃を当てる前に
ツクモが停止を解くはずがないとココットは考え、
そのことからツクモの能力に限界が来たのだと確信した。

よって、ココットはツクモの能力が回復して再び使用可能になる前に、
この場でツクモを倒しておくほうが良いと判断したのだ。

ツクモは余裕を取り戻したココットが気に食わないのか、
怒りの表情で短剣を構える。

「……能力が使えなくなったから、何だってんだ?
 たとえ能力が使えなくても、てめぇなんぞ……!」

ツクモはそう言って、ココットに突っ込んでいく。
いや、正確には突っ込んでいこうとした。

「……がっ、あぁぁっっ!!?」

……しかし、その前にツクモの背後から飛んできた雷が
ツクモの背を撃ち、その動きを止めた。

雷が飛んできた先は、もちろんファルだ。
ファルはツクモがココットを追いかけようとして
ファルの右腕から短剣を引き抜いて背を退いた瞬間、
すぐにボロボロになった右手で痛みを堪えて左腕の短剣を引き抜き、
自由になった左腕で雷を飛ばし放ったのだ。

「ふ……ふふっ……!ざまぁみろ、ですっ……!」
「て……め、ぇっ……!」

荒い息を吐きながら勝ち誇るファルに、
ツクモはその顔を嚇怒に染める。

……が、しかし。

「……最後まで油断しっぱなしだったわね、
 間抜けなジョーカーさん?」

振り返ったツクモの目に最期に映ったのは、
自分の首を斬り飛ばす、ココットの白刃だった。




首を失ったツクモの身体が倒れるのを見届けると、
ココットは剣を振って、付いた血を払う。

(さて……次はあの緑を殺さないと……)

ついさっき、雷で援護してもらったことなど関係ない。
ツクモという脅威がなくなった以上、共闘は終了、
ココットとファルは敵に戻るだけである。

しかし、ファルに目を向けたココットは目を見開く。

ファルは懐から取り出した小瓶を煽ろうとしていた。
その小瓶の正体は……。

(……キュアポーションっ!?まずいっ!?)

そう、ファルがディアナから渡されたキュアポーションだ。
この場面でファルに回復されてしまうと、ココットにとっては
まずいことになってしまう。

ココットは急いでファルに持っていた剣を投げ放った。

「……っ!?」

飛んでくる剣に気が付いたファルは慌ててそれを回避するが、
そのときにキュアポーションを落として零してしまう。

ファルがそれを悔やむ前にココットがファルに肉薄し、
ツクモの死体から奪い返した短剣を振り下ろす。

「く、ぅっ……!」

ファルはそれも何とか転がって回避するが、
空振ったココットの短剣が地面に叩き付けられた瞬間、
短剣を中心に凄まじい爆発が発生した。

サイギル族の竜剣技、爆剣ヴァーバだ。
ココットはファルに回避されるのを見越して、
この技を放ったのだ。

「うああぁぁぁぁっっ!!?」

爆発に巻き込まれ、ファルは悲鳴を上げながら
森の奥へと吹き飛ばされていった。

ココットは先ほど投げた竜鱗の剣を回収すると、それを追いかける。
いくら重傷を負っているとはいえ、ヴァーバの爆発に巻き込まれた程度で
あのファルが死ぬとは到底思えなかったからだ。

ココットはファルを追って、森の奥へと走るが……。

(……いないっ……!?)

辺りを見回しても、ファルの姿が無い。
そのことに、ココットは混乱する。

ファルはツクモによって、足を酷く傷付けられていた。
治癒の霊薬によって足の傷を回復したココットと違って、
逃げることは不可能なはずだ。

それどころか、ファルは両足だけではなく両腕も負傷しているのだ。
這って逃げることすら、満足にできるとは思えない。

……しかし、それでは何故ファルの姿が見当たらないのか?

(……もう一つキュアポーションを持っていた……!?
 いや、爆発で吹き飛ばされた後に飲む時間なんてなかった……!
 ……じゃあ、何か他の支給品を使って逃げたということ……!?
 仲間が二人いたのだから、ミラクルベルとキュアポーション以外の
 私が知らないアイテムを持っていた可能性も無くはないけど……!)

ファルの姿を探して辺りを見回しながら、ココットは考え続ける。
しかし、しばらくするとココットは頭を振って溜息を吐いた。

(……仕方ないわ。姿が見えない以上、あの緑を仕留めるのは諦めましょう。
 それよりも、散らばった支給品を回収しないと……)

ココットはファルを殺すことを諦めると、先ほどの場所に戻って
散らばった三人分の支給品を回収することにした。

そしてココットが元々持っていた竜鱗の剣2本に加えて、
ツクモの支給品であるナヤマの短剣2本とナヤマの胸当て、
そして先ほどの戦いでファルを焼き焦がした裂光の魔石が1個、
ファルが持っていた拳聖の鉄甲、黄金竜の腕輪、心眼のサングラス、
そしてファルとツクモの基本支給品が新たにココットのものとなったのだった。
(ちなみに、ファルの袋に入っていた石はいらないので捨てた)

キュアポーションの小瓶は残念ながら完全に零れていたが、
それでもこれらの支給品を全て手に入れることができたのは、
ココットにとっては幸運だった。

回復アイテムを全て使ってしまったこと、
ファルを仕留め損ねたことなどは不満だが、
概ね満足のいく戦果と言って良いだろう。

(……危ない橋をいくつか渡りはしたけど、なかなか順調ね。
 やはり最後まで生き残るのは、この私よ)

黄金竜の腕輪を嵌め、心眼のサングラスをかけると
ココットは笑みを浮かべて、その場を去っていった。




……ココットの気配が遠退いて数十秒後……。

陽炎のように景色が揺らいだかと思うと、
二人の少女の姿がその場に現れた。

一人は爆発に吹き飛ばされた後、姿を消したファル。
もう一人は、そんなファルの身体に押し潰されて
倒れているナヤマ一族の少女ヒカリだった。

「……よ……良かった……バレなかったみたい……」

ヒカリは緊張で強張っていた身体を弛緩させる。


ヒカリが城から離れて森の中をびくびくしながら歩いていると、
いきなり少女の悲鳴(拷問されるファルの悲鳴)が聞こえてきたのだ。
ヒカリはその悲鳴に怯えつつも『もしかしたらホノカたちかもしれない』と
考えて、悲鳴のした方向へと歩いていくことにした。

すると、いきなり爆発音とともにファルがヒカリのほうに吹っ飛んできて、
ヒカリはファルに押しつぶされるように倒れてしまったのだ。

ヒカリは慌ててファルを押し退けて逃げようとしたが、
気絶してぐったりしたファルの身体は重く、ヒカリの力では
すぐには押し退けられなかった。

焦るヒカリの耳に、自身へと近づいてくる足音が響いてきた。
仕方なく、ヒカリは透過の力を使って自身とファルを透明にしたのだった。
(ファルを透明にした理由は、ヒカリがファルに伸し掛かられているため、
 ヒカリだけが透明になるとファルが宙に浮いた状態になるからである)


(……で……でも、この後どうすればいいんだろ……?)

窮地を切り抜けたヒカリだが、その後どうするか途方に暮れてしまう。

ヒカリ視点では、傍で気絶しているファルも先ほどやってきたココットも
殺し合いに乗っているかどうかが分からないのだ。

状況から考えて、おそらくこの緑髪の少女と先ほどの褐色の少女が
戦っていたのだろうということくらいはヒカリにも理解できた。
だとすると、高い確率でどちらかが殺し合いに乗っているはずなのだ。
(あるいは両方とも乗っている可能性もあるだろうが、
 ヒカリはその可能性を失念していた)

ヒカリはぐったりしているファルの身体を苦労して押し退けた後、
腕を組んで考え始める。

(……さっきの褐色の子はこの緑髪の子にトドメを刺すために
 やってきたんだよね……?もし仲間なら呼びかけるはずだし……。
 ……で、私の力で透明になってたから見つけられなくて諦めた、と……。
 なら、殺し合いに乗ってるのは、あの褐色の子のほう……?)

ヒカリはそう考えるが、すぐに頭を振って考え直す。

(……ううん、そうとは限らない……。
 例えば、この緑髪の子が殺し合いに乗っていたとしたら、
 褐色の子はこの子を危険と考えて殺そうとしてもおかしくない……)

つまり、この緑髪の少女が殺し合いに乗っている可能性は否定できない。
……では、ヒカリはこの少女をどうするべきか?

(……何も見なかったことにして、置いていく……?)

そうすると、少なくともヒカリは安全だろう。
保身のみを考えるなら、それが一番良い案に思えるが……。

(……さすがに、それはちょっとなぁ……。
 こんな大怪我で放っておいたら死んじゃうだろうし……)

ヒカリはすぐにファルをそのまま置いていく案を却下する。
殺し合いに乗っていると確信できるのならともかく、
そうでもないのに見殺しにするというのはいただけない。

(……なら、治療だけしてさようなら、とか……?)

それなら、少なくともファルが怪我のせいで死ぬことはないだろう。
治療中に目を覚まして襲いかかってくるようなことが無い限りは、
ヒカリの身も安全だろうし、大きな問題は無いように思える。

(……でも……もし、この子が殺し合いに乗っていたら……?)

もしこの少女が殺し合いに乗っていたとしたら、
ヒカリは殺人鬼の手助けをしてしまうことになる。

その場合、ヒカリは間接的な人殺しになるのではないだろうか?

(……う~ん……だったら、やっぱり治療した後、
 目を覚ますまで待ってるしかないかなぁ……?)

見たところ、この緑髪の少女はヒカリと同じくらいの年齢のようだし、
支給品を奪われてしまったのか、完全に丸腰のようだ。
身体もヒカリより小柄であり、どう見ても強そうには見えない。

(……サボりまくってたけど、私だってナヤマ一族として
 一通りの武術の訓練は受けているんだ……。
 武器も持ってない自分より小さな女の子くらい、
 暴れても何とか抑えられるはずだよ……きっと……)

もしこの緑髪の少女が殺し合いに乗っていたとしても、
自分でも対処はできるはずだとヒカリは判断して、
少女の治療を始めることにした。


……もちろん、実際には格闘に長けたファルを
ヒカリが抑えることなど、到底不可能である。

ヒカリがもう少し真面目に武術の訓練を受けていたとしたら、
ファルが小柄ながらも鍛えられた身体つきをしていることが
理解できただろうし、そのことを警戒もできただろう。

もっともそれが理解できなかったからこそ、ヒカリはファルを警戒せずに
素早く治療を行うことができたのだから、何とも言えないところではあったが。


【ツクモ@連合構成員 死亡】
【残り人数 41名(内ジョーカー5名)】


【A-2/森/1日目 2:00~】

【ココット@サイギル族】
[年齢]:16
[状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、アバラ2本骨折
[武器]:竜鱗の長剣×2、ナヤマの短剣×2
[防具]:魔人の胸当て、黄金竜の腕輪、心眼のサングラス
[所持品]
・ココットの袋
 ・基本支給品一式×4
 ・塗装の魔石×2
 ・裂光の魔石×1
 ・ナヤマの胸当て
 ・拳聖の鉄甲
[思考・状況]
1.全ての参加者を殺して生き残る

※握り込むのに適した石は捨てました。


【ファル@格闘家】
[年齢]:15
[状態]:気絶、ダメージ(大)、疲労(大)、血塗れ、
    裂光の魔石と爆剣による火傷、両腕両足に貫通した刺し傷、
    右手の全ての指を骨折、爪を剥がされている
[武器]:なし
[防具]:なし
[所持品]
・なし
[思考・状況]
1.アルフィ、ディアナと一緒に行動する
2.師匠(イリカ)を探して合流する
3.褐色の女剣士(ココット)を警戒
4.ルルフェ、フィナは安全と認識


【ヒカリ@ナヤマ一族】
[年齢]:15
[状態]:健康
[武器]:包丁
[防具]:ミスリルの盾
[所持品]
・ヒカリの袋
 ・基本支給品一式
 ・調味料各種
 ・治癒の魔石×3
[思考・状況]
1.ホノカ、マユラと合流して守ってもらう
2.シオンは見つけたら保護する
3.魔法陣の傍は危険だから近寄りたくない
4.緑髪の少女(ファル)を治療する
5.緑髪の少女(ファル)が目を覚ますまで待つ

※光を透過する『透過の力』が使えます。
※ヒーリングの魔法が使えます。
※城に首輪を捧げると起動する転移用の魔法陣があることを知っています。
 この殺し合いの場にはいくつか同じ魔法陣があると考えています。


『参加者・ジョーカーの現在地』  ※マリシアの現在地は不明
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Re: No title

ありがとうございます。(*´ω`*)
とはいえ、現在は更新停滞中で次を確約できないのが心苦しいところ…!
気長にお待ちいただけるとありがたいです…!
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